受け取る話
某日、某場所にて私は番号札を持たされ
途方にくれていた…
周りは、五千だの一万だのの数字が飛び交う。
私は完全に場違いだった。
なんでこんなことのなったのか…
ちょうど2週間ほど前だった
ディッキアを分頭(双頭になってるから株分けみたいに割る)するから、ほしい人いませんか
というインスタでの告知を見た私は
引き寄せられるように、ダイレクトメールをしていた。
すでに3日ほど経過しているし、人気の方だからもう誰かに決まってしまったかもしれない。…しかし、それならそれで。と思いながら、希望の旨をしためめて送信した。
返事は意外なものだった。
まだ、行き先が決まっていないから、私が受け取ってもいいらしい。
ラッキーだ
ただ、週末に割って一週間ほど養生してから送ります。とのことで
私もすぐに送られて傷むよりと思い、了承した。
一週間と少したった頃、連絡がきた
ちょっと忙しいから送るのが翌週になるかもしれないがそれでいいか
もし、差し支えなければ、週末にイベントがあるからそちらに来てくれないか。
そしたら品物はそちらで受け渡す。というような事を簡潔に書いてあった。
私は運動会の翌日か…と一瞬思ったものの
雨天時の予備日として予定は空けてある。
ちょうどいいかもしれないな。と、思い
行けそうなら行きます。と返事してパソコンを閉じた。
そして、電車を乗り継ぎ二時間かけて到着したのはお昼を過ぎた頃だった。
植物のイベントというのは分かっていたが、詳細を知らぬまま、ただ頼んだ植物を受け取に来ただけだったので
こんなに人と植物がひしめいているとは知らず…
そして、13時からオークションが開かれることも知らず
私は知り合いを見つけてしまった。
彼らは植物に詳しく、楽しい会話の術も心得ている。
私の事情をすぐに理解し、ディッキアの持ち主とスムーズに引き合わせてくれ、更に詳しい話も引き出してくれ、楽しい時間をすごした。
そうしていると、これからオークションだという。一度見ておくのもいいかな。
と、参加…(いや、見学か)することに決めたのである。
それが冒頭の話である。
もともと、そのオークション狙いできているマニアばかりの熱い集まりに、私の熱量がついていけるはずもなく
所在なさげなのが伝わったのか、二人が優しくしてくれる
こんなアウェイの地で親切にされると惚れて…しまうような、ことはないが
次回、一緒に飲むようなことがあったらビールの1~2杯は奢ろうと心に決めた。
珍しいものからそうでもないものまで、テンポよく紹介され、その度に周囲の人達が互いの顔色を伺いながら駆け引きをしていく。
私はただ、その大きな流れのようなものに飲み込まれないように足場を確認しながら後ずさるしかなかった。
サイレントオークションも平行して行われていたが、こちらも混迷を極め、最後の方はまさに修羅であった
私は大変なところに来てしまった…
そうこうしている間に、オークションは全て終了し、それぞれ青い顔をしながら支払いを済ませ、帰ろうかという時に
送りますよ~乗り合わせできてるから、一旦うちに寄ってからになりますけど。と、優しい二人は、どこまでも優しく
私は、どこまでも図々しかった。
結果、部屋にあげてもらい、冷えたポカリスエットを三人で飲みながら、植物やれ爬虫類やれ部屋の間取り等々、途切れることなく話つづけ
私は帰ることを忘れていた。
気がついたら、すっかり夕方で
夕飯の時間に帰りつけるか?作る時間は?メニューは?と、一気に現実に引き戻され、夢の部屋を慌てて後にした。
少し遅くなったことを家族に詫び、普段よりちょっぴり豪華な食事をとり、すっかりリラックスしているとき、ふとケータイを見ると
これ、コトリさんのですかー?
と、一枚の画像が添付されたメールが…
どうやら慌てて帰るときに、日傘を忘れて帰ってきてしまったようだ。
後ろ髪引かれながら帰った、夢の部屋への鍵はまだ、手の中にある。
次のイベントで日傘を受けとることを約束し、私は洗濯物を干すために席を立った。