真夜中のナニカ。
それは、寝苦しい夜のことだった。
枕の位置を何度も変えながら、ようやっと、うつらうつらしようとしている午前2時半。
隣に寝ている男に揺り起こされ、一言二言、言葉を交わし
再び眠りにつこうと毛布を肩まで引き上げた時
ふと、気になったのだ。
しばらく前に連れてきた約10匹のネオンテトラのことが。
正確には9匹だが。
その、ネオンテトラの事が、夜中、ふと気になって仕方がなくなったのだ。
私は、布団からするりと抜けだし、カーディガンを羽織り
漆黒の闇にかすかに浮かび上がる、四角い影の前に立ってみる。
水槽の灯りはもうずっと前に消えており、魚達も各々、お気に入りの場所に隠れているのか、ただ、静かに動き回るエビ以外に、何かいるとも思えない空間をじっと見つめる。
『13匹いるはず。』
いつの間にか、口から漏れ出た声は、思いのほか乾いてうわずっていた。
たまらず、水槽の灯りをつける。
眩しい灯りに、しばし目がくらみ魚の姿が上手くとらえられない。
それは、向こうも同じことのようで
水草の陰から、体をこちらに向けてはいるものの、ぼんやりしている。
そのうち、朝と思ったか、草の陰から姿を現す、メダカのような、醒めた色合いの魚影達。
私は数える。1匹、2匹
祈るように…
13に少し足りない。
…眠たくて、まだ出てきていない魚もいるかもしれない。
6度目、数えようとした時、そんな考えが頭をよぎった。
明日にしよう。
魚たちも急に起こされて迷惑だったろう。
ごめんね。
灯りを消した部屋はまた、とっぷりと暗い闇に包まれた。
同時に私の心も、闇に支配されたかのように、ひとつの考えが、べったりとこびりつき離れなくなった。
…近頃の大量のコケや藍藻はもしかして。
人間は悲しい生き物だ。誰かが言った。
生き物は総じて、他の生き物の糧となる。
ただ、死ぬのではない。
なのに人は、ひっそりと白い部屋の片隅で人でなくなる。
何モノの糧になることなく。
朝、もう一度数えて足りなければ諦める…か。
深く呼吸し、目を閉じた。
クリックありがとうございます。
やっぱり9匹しかいません。
どこかで聞いたフレーズ…(泣)
飛び出した感じではないようなので、ひょっこり現れるかも?